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京都市

06.17

【スペシャルインタビュー】戸田農園|戸田尚樹さん

(インタビュー・文:京都外国語大学グローバルスタディーズ学科 大向恵冬/安永果穂)

今回は上賀茂地域ですぐき漬けを生産している戸田尚樹さんにお話を伺いました。上賀茂神社周辺にはすぐき漬けのお店や加工場がたくさんあり、インタビュー前からすぐき漬けの生産が盛んな土地だと感じました。

すぐきの歴史

すぐきとは京都伝統の漬物、すぐき漬けの原料となるかぶの一種で、元々社家と呼ばれる神社に仕えた人たちが育てていたそうです。その後、地域の農家に分けられ、最初は5軒ほどの家ですぐきの栽培が始まりました。

戸田さんの作るすぐきは、先祖から代々受け継いできた種を毎年毎年植えており門外不出といっても過言ではないそうです。品種改良もしておらず、それでも毎年すぐきを作ることができていることから、戸田さんたちの凄さが伺えました。また、戸田さんは夏には賀茂なすも栽培されており、毎年上賀茂特産野菜研究会で種を保存するなど、伝統的な野菜を絶やさないように取り組まれています。

苦労とやりがい

戸田さんのすぐきは9月ごろに栽培が始まり、11月には収穫します。その後、1ヶ月ほど重石漬けを行い、室に入れて発酵を進めすぐき漬けとして出荷されています。すぐきが芽を出し育ってくると、間引いて成長を促すそうですが、すぐきは繊細で育てるのが難しいといわれています。また、今回お邪魔させてもらった畑でも周りが住宅で、影になる場所とならない場所があり最初は育てるのに苦労したそうです。

さらに最近では、温暖化や予想しにくい天候、物価高にも大変悩まされているとのことで、販売価格と経費のバランスが取りづらいことも課題だとお話をいただきました。それでも、常連のお客さんから「美味しかったよ。今日はなすないの?」と尋ねられた時は嬉しく感じ、やりがいも得られるといいます。

さまざまな取り組み

戸田さんは「上賀茂特産野菜研究会」と「京の上賀茂すぐき倶楽部」に所属されており、様々な取り組みを行われています。上賀茂特産野菜研究会は「京賀茂なす」を共同出荷している会で、現在16人の農家が集まり、京賀茂なすの栽培を伝承するため定期的に勉強会を開催しているそうです。一方、京の上賀茂すぐき倶楽部は現在30名ほどの農家が所属しており、すぐきの栽培技術や漬け込み技術の向上に取り組んでいます。

また、販売促進を通じて地域特産品としての魅力を広める活動を行っています。上賀茂神社にすぐきを奉納する「すぐき道中」ではすぐきの樽神輿を担いで本殿までを歩いたり、コロナ禍以前には販売会などのイベントも開催していたそうです。

伝統と未来をつなぐために

戸田さんは農業に対して「昔ながらのやり方を守る」ことに深い意義があるとお話しされていました。何か新しいことも考えておられるそうですが、やはりこれまでの知恵と伝統を継承していくことが何よりも大切だといいます。

しかし、最近の物価高騰により経費が増加し、多くの農家では生産を維持してくことが難しくなってきているそうです。農家減少が進む厳しい状況の中ですが、次世代の育成にも力を入れていく必要があるとお話されていました。「すぐき漬け」の魅力がたくさんの人に伝わり、京都の食の伝統がこれからも受け継がれていくことを願っています。

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